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研究紹介

​八木研究室では、環境材料やエネルギー機能材料に注目し、ナノ粒子・薄膜材料を中心に研究しています。当研究室のポリシーは、”自身の手で作り”、”自身の手で分析し”、”自身の手で解析し”、”自身の手でまとめる”という一連の研究を推進しています。これまでに進めてきた研究内容のいくつかを以下で紹介します。

1:絶縁体もXAFS測定できる手法の開発

材料物性を測定する上で、X線を用いた​X線吸収微細構造法(X-ray Absorption Fine Structure)の利用は非常に有用な知見が得られます。しかしながら、絶縁体や液体状態の試料に対しては、種々の問題点が存在し、測定が容易に実施できない状況でした。

特に軟X線領域の元素を含有する試料のXAFS測定においては、X線を吸収した後に生じる”チャージアップ効果”により、測定がままならない問題点がありました。この問題点を克服するため、”He-path:Heパス”を開発しました。

このHeパスは、大気圧のHeで試料雰囲気を満たしてやることで、絶縁体や液体状態の試料に付いてもXAFS測定が可能となりました。

特に、企業さんが作製した試料については、プラスティック材料、セラミックス材料、そしてポリマー材料が多く、多くの分析が困難な状態でしたが、本測定システムの利用で多くの有用な知見が得られるようになりました。

​Keywords: X線分光、X線検出、大気圧条件分析、He-path、非破壊分析

2:ナノ粒子の作製(ドライプロセス)​

 

数 nmサイズ(主として1-5 nm程度)のナノ粒子の作製については、Heガス雰囲気中で作製する手法である”ガス中蒸発法”を利用します。この手法では、大量にナノ粒子の作製はできませんが、少量ながら非常に清浄な表面を有するナノ粒子の作製が可能です。

​当研究室では、実験室においてもナノ粒子を作製した後に大気にさらすことなく真空環境のまま輸送できる装置により、真空環境下でXPS測定ができています。この環境に近い状態で、国内のシンクロトロン放射光施設でも大気にさらすことなくXPS測定ができる工夫をし、世界初のデータを取得しています。

​Keywords: ナノ粒子作製、ドライプロセス、ガス中蒸発法、清浄表面をもつナノ粒子

3:加硫ゴムの化学反応を解明する

19世紀にGoodyear(たまたまグッドイヤーというタイヤメーカの名前が一緒ですが、無関係だそうです)が生ゴムに硫黄粉末を添加して過熱することで、弾性に富んだ加硫ゴム発見されました。しかし、この反応の詳細は未だに理解できていないところが多く存在しています。

​本研究室では、この加硫反応をはじめ、添加試薬(加硫促進剤や酸化亜鉛など)との反応について軟X線の放射光とHeパスを活用して解明しようと挑戦しています。上の画像は硫黄粉末の光学顕微鏡像(左図)と粉末試料の加熱機構(右図)です。

Keywords: 加硫ゴム反応、環境低負荷、架橋構造、高パフォーマンスタイヤ

4:ナノ粒子の作製(ウェットプロセス)

先述したドライプロセスによるナノ粒子の作製と異なり、ウェットプロセスでは大量にナノ粒子の作製が可能です。

本研究室では、分散剤を一切使用せずにナノ粒子の作製が可能な”液中プラズマ法”を用いて金ナノ粒子や銀ナノ粒子の作製を行っています。また、従来どおりの分散剤を利用したナノ粒子の作製も行っており、”液中プラズマ法”で作製が困難なナノ粒子の作製を推進しています。

上の画像は、金ナノ粒子を液中プラズマ方で作製している最中の様子(左図)、ロジウムナノ粒子を溶液還元法で作製している最中の様子(右図)です。

​Keywords: ナノ粒子作製、ウェットプロセス、液中プラズマ法、溶液還元法

5:ナノ粒子と生体の反応を解明する​

種々のナノ粒子が創り出され、そして消費されている現在、それらナノ粒子は少なからず我々の環境に拡散されています。食物連鎖を考慮すれば、最終的には雑食である我々人間たちの体内に蓄積されることは想像するにやさしいと思います。

では、ナノ粒子と生体内に存在している分子(主としてアミノ酸)は、どのような反応を示すのでしょうか? その疑問に答えを出すべく、ナノ粒子とアミノ酸分子を生体内を模した環境である水溶液中で反応させ、その化学状態変化を調べています。

また、その応用としてがん細胞の死滅をねらった”温熱療法:ハイパーサーミア”への応用についても併せて研究しています。

​上の画像は、金ナノ粒子とリン酸含有分子の反応溶液の状態(左図)と凝集した金ナノ粒子の透過電子顕微鏡画像(右図)です。

Keywords: 生体環境における反応、生体適合性、温熱療法、ガン抑制

6:水素吸蔵材料の開発・研究

エネルギーを蓄える手法としては、2次電池や化学物質としての対応が研究されていますが、当研究室では水素に注目し、その貯蔵物質の開発・研究を推進しています。材料としては、Pd、Mg、Niの3元素からなる物質で、それらを全てナノ粒子化して水素分子の解離反応を促進し、水素原子の拡散係数を増大することをねらった研究を進めています。この研究は、近い将来に到来が見えている”水素社会”を支える技術になるため、非常にホットな研究テーマとなっています。

​研究室の実験室でも種々の実験をしていますが、せっかく材料を作製しても放射光施設へ運搬している最中に、大気中の酸素や水蒸気によって劣化してしまうことが多いため、最終的な実験は、放射光施設のビームラインで直接試料作製と水素吸放出実験を実施しています。このような実施形態は世界的にも例が少ないです。

Keywords: 水素吸蔵材料、水素吸蔵・放出反応、ナノ構造、エネルギー材料

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